真のホスピタリティとは?おもてなしとの違い
「ホスピタリティ」はホテル・レストラン業、接客業全般にとってエッセンスともいうべきものです。
しかし、「ホスピタリティ」とは何なので しょうか?
「おもてなし」と違って目に見える形がありませんから、それを理解するの は大変難しいことです。
ここでは、真の「ホスピタリティ」について、紐解いていきます。
ホスピタリティの語源とその意味
「ホスピタリティ (hospitality)」 の語源は、ラテン語です。
「客人を保護し、歓待する」とい う意味の言葉(hospitalis) から来ています。
この言葉の誕生は、ヨーロッパで聖地巡礼の旅がさかん だった中世にまでさかのぼります。
当時のヨーロッパには、まだ宿泊施設が存在しませんでした。
そのため、野宿をすることも多かったのですが、盗賊や野生動物に襲われて命を落とすこともあったそうです。
そこで、修道院が。旅人に、雨風や寒さをしのぐ一夜の宿と食事を無償で提供するようになったのです。
この修道院の行動から「誰であれ困っている人を心からいたわること」「その場にあるも のと知恵を使って助ける、親切をすること」またその精神を「ホスピタリティ」と呼ぶようになったといわれています。
おもてなし・ホスピタリティ・サービスの違い
おもてなしとホスピタリティの違いは、モノかヒトかの違いです。
「おもてなし」にはモノ(飲食物)が必須なのに対して、「ホスピタリティ」に重要なのはヒト(心)の部分です。
つまり接客こそがホスピタリティと言えます。
ちなみに、似たような言葉で「サービス」もありますが、これは「おもてなし」とも「ホスピタリティ」とも性質が異なります。
「サービス」の元の言葉は「主君に仕える」という意味のラテン語 (servus)です。
サービスを受ける側は「主人」、サービスを提供する側は「しもべ」になります。
つまり、絶対的な上下関係が存在しているのです。
一方で、ホスピタリティに上下関係はありません。
スタッフが自発的に動くからこそ「ホスピタリティ」と呼べるのです。
ホスピタリティの真髄とは?
ホスピタリティは、皆さんが考えるほど難しいものではなく、とてもシンプルなものです。
一つ、私の経験をお伝えします。
帝国ホテルへの面接のときに、面接終了後、面接官に対して
「今日はお疲れさまでした。 お気をつけてお帰りくださいませ」
と挨拶して一礼しました。
得点稼ぎの意図などはなく、朝からつきっきりで私たちの面倒を見てくださって、今日はハードな一日だっただろうと想像したために、自然に出た言葉です。
このとき、下を向いて 評点をつけていた面接官が驚いて目を丸くしていたのをよく覚えています。
今考えてみると、この行動こそがホスピタリティだったのだと思います。
つまるところ「ホスピタリティ」とは、「身近な人に親切にすること」 なのです。